special feature My BABY&Me

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vol.07
株式会社WIS代表取締役/アスレチックトレーナー
平井 晴子さん

先輩ママ・パパへのインタビューを通して「育児と仕事」をテーマに物語を紡いでいく特集『My BABY & Me』。

vol.07では、女子7人制ラグビー日本代表のヘッドアスレチックトレーナーを務めるなど、トレーナーとして幅広くアスリートをサポートする傍ら、株式会社WISを立ち上げ女性トレーナーを育成・派遣するビジネスも展開し、さらには大学の非常勤講師まで務めながら3歳と5歳の2児を育てる平井晴子さんにお話をうかがいました。元女子ラグビー日本代表の鈴木彩香選手をして「スーパーウーマン」と言わしめるパワフルな平井さんが、スポーツ業界において女性のキャリアの「壁」となっている出産・育児に立ち向かう姿に勇気づけられる読者も多いはず。

撮影協力:鈴木 彩香さん(写真左)

元女子ラグビー日本代表選手。2007年の代表選出以降、7人制ラグビーでリオ五輪、2度のワールドカップ出場経験のほか、15人制ラグビーでもワールドカップに2度出場するなど、2023年の引退まで長きにわたり女子ラグビーの黎明期を支えてきた選手の一人。平井さんとは日本代表時代からの付き合い。「晴子さんはまさにスーパーウーマン。とにかくエネルギーがすごい」と語る。

まずは「アスレチックトレーナー」というお仕事についてお聞かせください。どういうものなのでしょうか。

アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、健康管理や体力トレーニング、コンディショニングなどを行う仕事です。選手の命を守るのを第一として、応急処理やアスレティックリハビリテーションなども行う立場です。

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ということは国家資格なのでしょうか?

アメリカの国家資格ですね。スポーツがとても盛んな国アメリカでは、アスレチックトレーナーの位置づけが高く評価されています。4年制大学に留学し(現在は大学院卒業が条件)、インターンを経て国家試験を受けて取得するというものです。

留学後に7人制女子ラグビー日本代表のトレーナーになるわけですが、どうやってなるものなのでしょうか?

元々、アメリカでアスレチックトレーナーをしていたときに「日本に帰ったら女子ラグビーに関わりたい」と思っていて。で、アメリカでボスだった方が7人制ラグビーのアメリカ代表チームのトレーナーをされていたんですが、ちょうどそのタイミングでリオオリンピックから7人制ラグビーが正式競技になるということがわかって、じゃあ「リオで再会しよう」ということで「日本に帰ったら日本代表のトレーナーになる」と決心して2011年に日本に帰ってきました。それでちょうどトレーナーの公募が出たので応募して...という感じです。

すごい。帰国後早々に実現したんですね。公募の選抜はどのように行われたのですか?

合宿に一人ずつ呼ばれて、実地面接のような形の審査があって...という感じです。

いまはトレーナーとしてはどういった方を担当されているのですか?

女子ラグビーの日本代表には今でも関わっていますし、あとは個人の方で柔術の選手とか、パワーリフティングの選手とか。いろんなスポーツの選手に関わっていますね。最初は男女問わず見ていましたが、いまは自分の得意なところに特化しようと女性アスリート限定で見ています。「女性アスリートのサポートといえば平井」と言ってもらえるように頑張っています。

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現在はトレーナーをしながら、女性トレーナーの育成・派遣を行う会社も経営している状況ですよね。会社を立ち上げるまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか?

子どもが生まれて、トレーナーとしてなかなか現場に出られない中で「自分がどういった形で社会貢献できるかな」と考えたときに、自分が一人で頑張るよりも一緒にやれる人をどんどん増やしていこうと思い2022年にトレーナーの育成・派遣を行う法人を立ち上げることにしました。
結構スポーツのトレーナーってボランティアベースで考えられることがあるんですね。でもそれだとトレーナーの方たちが食べていけないので「プロとしてお金をいただいてやる仕事」として広められるよう一般社団法人ではなく株式会社という形を選択しました。

派遣先はどのようなところになるんですか?

個人の方もいればスポーツチームなどの団体もあります。最近はスポーツイベントの会場で独自の運動プログラムを取り入れた託児サービスを行う人材派遣も増えています。

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このサービスはすごくいいですよね。観客にとってありがたいのはもちろん、主催者にしても子育て世代にも来てもらえるうえ未来のファンも育成できて。

あと選手や会場のスタッフも子どもを預けられるんですよ。お客さんも選手もスタッフも「小さい子どもがいるからできない」ということがもっとなくなっていけばと思います。

経営者として、トレーナーとしてさまざまな業務をされていると思うのですが、それぞれどういった割合で働かれているのでしょうか?

理想は経営者としての動きを増やしたいですが(笑)、現状は半々という感じですね。トレーニングの指導のほか、講演で呼んでいただくことが多かったり、大学の非常勤講師もやっているのでなんだかんだ自分で動くことがまだまだ多いという状態ですね。

非常勤講師まで! どんなテーマで講演されるのでしょうか?

「女性がスポーツ界で働くために」といったものを専門学校や大学の学生さんに向けてお話したり、月経や産後復帰サポートなど「女性アスリートを支えるために必要な知識やスキル」といったものについてシンポジウムやセミナーなどでお話することが多いですね。

講演や講師までされていて、かなり忙しく働かれているのかなと思うのですが、家事・育児のご主人のサポートはいかがでしょうか?

主人は料理も洗濯・掃除が得意ですし、仕事もリモートワーク中心なので、どうしても夜遅くなってしまう仕事のときでも快く対応してくれます。寝かしつけだけは、子どもが「ママがいい」と言うみたいで難しいみたいですが(笑)

今回、お子様との思い出の品をお持ちいただいたのですが、見せていただいてよろしいでしょうか?

これです! 娘(5歳)が描いてくれたんです。娘は絵を描くのが大好きで毎日何か描いてて。で、母の日に描いてくれた絵を主人がバッジにしてくれたものです。

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すごい! 素敵ですね!

いつも笑顔いっぱいの絵を描いて「お仕事頑張ってね」と言って渡してくれるんです。結構怒ってばかりのはずなんですが(笑)。 このバッジは私の宝物ですね。

お子様にはやはりスポーツをやってほしいですか?

はい。何に興味を持つかというのはわからないので、なるべくいろんなスポーツに触れさせようと思って、いろんな体験に連れて行っています。最終的な「やる」「やらない」は本人に任せていますが。結構アスレチックトレーナーの目線で子育てしているところがあって、特性的にはクライミング系とか合うんじゃないかと思っています。ボルダリングでオリンピックに連れて行ってくれないかなと密かに思っています(笑)。

トレーナーの道を追求するだけでなく、さらにはいま子育てをしながらトレーナーの育成まで...かなりパワフルに活動されていると思うのですが、その原動力の根っこにあるものは何なのでしょうか?

やはり自分自身が妊娠して出産したときに体の変化についていけず苦労したという経験が大きいですね。「あ、腰が痛いな」というときに、トレーナーとして知っていた「こうしたら大丈夫なはず」というのが通用しなくて「あ、産前産後のケアは一味違うぞ」と驚きました。特に、出産当時は大学院に通っていたのでものすごく大変でした(笑)。
でも日本にはそういった産後ケアの研究があまりなかったので、海外の文献を自分で読んで「あ、こうすべきだったんだ」「あ、これやっちゃいけないんだ」というのが出てきて。私は幸い留学経験があり英語も読めたので、海外の論文や情報を集めて自力で学ぶことができましたが、そうもいかず困っている女性が多くいると思ったので、私が集約して教えられるようになろうと考えるようになったという感じですね。

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さらっと仰っていましたが、留学後に大学院まで行っていたんですか? しかも子育てをしながらということですよね...? 

はい(笑)。もともとライフプランに「妊娠中に大学院に行く」というのが入ってまして。一人目妊娠中から二人目出産も院生をしながらだったのでものすごく大変でした(笑)。

すごいですね...。大学院でもトレーナーとしての研究をされていたのですか?

はい。女子ラグビーにおける外傷・障害を主に研究していました。今後は産前産後の運動について研究していきたいと考えています。アスリートの産前産後の研究というのは本当に少なくて、日本国内はほとんどないですし、アメリカやカナダに少しあるくらい。それらも参考にしつつ、日本人の身体にあった運動についてデータを集めて...ということをしたいと思っています。

子育て中の女性アスリートにとって、ものすごくありがたい存在だろうと思うのですが、そういった声は多いですか?

そういうお声はよくいただきますね。そもそもトレーナーの男女比率は5:1と言われていまして、女性選手に男性のトレーナーがつくことがほとんどです。なので「安心して何でも話せるようになった」と言われることも多いです。また、女性トレーナーであっても月経のことや産後トレーニングのことについてはあまり知らないというケースも多くあるので、もっとそういった研究が広がっていけばと思っています。

産後トレーニングでは赤ちゃんを連れてトレーニングができるんですか?

もちろん、大歓迎です! むしろ私も赤ちゃんに会いたいので。赤ちゃんはベビーカーやマットに寝かせておいてもらってもいいですし、ウェイトトレーニングの重りとして(笑)参加してもらってもOKです。

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最後に、今後の展望や社会に向けて発信していきたいことについてお聞かせください。

スポーツに関わっている女性がやりたいことを諦めるということがないようにしたいですね。さまざまな選択肢があって、それを自らで選べるという社会にしたいと思っています。アスリートはもちろん、コーチやトレーナーも女性の方は「子どもが生まれたらもう続けられない」という方が少なからずいます。そうならないよう、スポーツという土壌において、お子様がいても本人が望めば現場に出られるし、お子様がいなくても女性としての強みを現場で生かしていけるそんな環境を整えていければと思っています。

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